こんにちは、合川です。
突然ですが、皆さんは読書をする際に、自分の好みのジャンル・シチュエーション・傾向を意識したことはありますか?
さらにはその好みが、いつどの作品で植え付けられたものなのかを考えたことはありますでしょうか。
もっと単刀直入に言うと、己の性癖です。性癖ありますか。
私はあります。
とは言え、好みは一つのコンテンツから作り出されるものに非ず。
数多の作品に触れ、そこから要素を抽出し、組み合わせることで生じるものでしょう。
私はどうやら『美女と野獣』のように「グロテスクなビースト・怪人と美しい女性(の純愛)」が好きなようです。
私のこの癖(ヘキ)は中学2年生の時に読んだ『ライチ★光クラブ』の影響が大きいと思います。
具体的な例を挙げると、
『ライチ★光クラブ』(漫画) 人造機械のライチと美少女カノンの純愛
『ノートルダム=ド=パリ』 醜い鐘番カジモドのエスメラルダへの恋心
『オペラ座の怪人』 怪人ファントムから歌姫クリスティーヌへの執着愛情
などがありますね。
さて、上に挙げた作品のうち『ノートルダム=ド=パリ』はいずれ紹介するとして(語りだしたら止まらないため)、今回は『オペラ座の怪人』を紹介したいと思います!
角川文庫
いつも通り、以下あらすじです。
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舞台は19世紀末のパリ。
華やかなオペラ座にはある”噂”がまことしやかに囁かれていた。
――このオペラ座には恐ろしい怪人が住み着いている――と。
どうやらこの謎の怪人は、歌姫・クリスティーヌに執着しているようで、『ファウスト』の上演では彼女をプリマドンナに抜擢するよう求める。
しかし、オペラ座は怪しい男の要求を吞むことはなかった。
同時に、クリスティーヌのライバル・カルロッタのもとにも怪人から脅迫の手紙が届くようになる。
『ファウスト』では予定通り、カルロッタがプリマドンナを務めることになる。
何事もなく上演が執り行われているように見えたが、舞台上で、カルロッタは突如声を失うという謎のトラブルに見舞われる。
その直後、客席の巨大シャンデリアが落下するという大事故が発生する。
誰もが全てのトラブルは怪人の仕業であると信じて疑わなかった。
後日再び『ファウスト』が上演されると、カルロッタに代わり、プリマドンナにはクリスティーヌが抜擢された。
クリスティーヌは<音楽の天使>と名乗る謎の声からレッスンを受けており、このところ歌唱力が急激に向上していたのであった。
その<音楽の天使>に導かれるように、大勢の観客の目の前で、クリスティーヌは舞台上から突如姿を消す。
怪人に攫われたクリスティーヌを救出するため、彼女の幼馴染・ラウル子爵はオペラ座の地下へと向かう……。
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私が初めて『オペラ座の怪人』を知ったのは、小学生の時に読んだ『金田一少年の事件簿』の「オペラ座館殺人事件」からです。
『金田一少年~』の作中では、オペラ座の怪人のストーリーに乗っ取り、次々と連続殺人が起こるという内容でした。
漫画の中では、カルロッタ役を演じる高校生の少女がシャンデリアの下敷きになって殺害されるという、連載一発目から少年誌のラインスレスレを狙っていました。
そのせいか私は今までカルロッタは怪人によって殺害されるというイメージがあったのですが、そんなことはなかったですね。
しかし大勢の観客の前で声を失い、挙句の果てには口からヒキガエルが飛び出すという辱めを受けたカルロッタ。
かなり我儘で自分に自信をもっている女性なので、この仕打ちは死ぬより辛いのではないか……とも思ってしまいます。
別にクリスティーヌを虐めていたわけでもなし、予定通り舞台に立っただけなのに、人生とプライドめちゃめちゃにされて、可哀想ですよね。
この出来事からも、怪人がクリスティーヌを振り向かせるためには手段を選ばない、冷酷な人物であるかが分かりますね。
いかなる手段を使ってでもクリスティーヌを振り向かせたい怪人。
そんな彼と対比されるように描かれているのは、クリスティーヌの幼馴染ラウル子爵です。
怪人に攫われたクリスティーヌを助けるため、時には自分の身を危険にさらしながらもオペラ座の地下深くへと潜入していきます。
一方そのころ、クリスティーヌは怪人が用意した地下の部屋で、何不自由ない暮らしを約束されていました。
豪華なドレス、美味しい食事、彼女が望むものは何でも手に入るような環境を与えるというのです。
その代償に彼女は怪人のためだけに歌うこと、怪人の妻になることを迫られます。
もちろんクリスティーヌは拒否しますが、怪人はそれも想定済み。
――自分の要求を呑まなければ、オペラ座を爆破する。
クリスティーヌに残された選択の時間は刻一刻と迫っていくのでした。
脅迫じゃん、これ!!!!
さすがに強硬手段に出過ぎじゃないですかね……。
たとえクリスティーヌが自分の要求を呑んで妻になったとして、それって本当の愛なんですかね……?
恐怖で押さえつけた偽りの愛で、本当に幸せなんでしょうか。
怪人は生まれ落ちた時からその醜さゆえに世間から見放され、自らの力だけで、オペラ座の地下で暮らすことを余儀なくされていたそうです。
母の愛も人の愛も知らず、世界から拒絶され虐げられながら生きていた怪人。
それゆえに彼の言動の本質には、どこか幼い感じがあります。
「クリスティーヌが自分のものにならなければ、オペラ座を爆破する」
欲しいものが手に入らないからと言って駄々をこねるガキクソ子どものようです。
そう考えると、怪人はクリスティーヌにどこか母性のようなものを感じていたように思えます。
「ありのままの自分を無条件に受け入れ、愛してくれる存在」「無償の愛を永遠に与えてくれる存在」としてクリスティーヌに己の母親を重ねていた(投影していた)のではないでしょうか。
「クリスティーヌ・ダーエは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」みたいなことでしょうか。
そんな怪人に初めは怯えていたクリスティーヌですが、彼の心の闇に触れるにつれ、少しづつ彼に興味を持ち始めます。
怪人の孤独な身の上を哀れみ、心を慰めようとします。
とは言えクリスティーヌから怪人への気持ちは恋愛的なものではなく、幼い子どもをあやすような優しい同情でした。
二人の気持ちは一見すれ違っているように見えて、実際は嚙み合っているというのが、なんとも切ないですね。
怪人は恐ろしいモンスターではなく、孤独を抱えた一人の人間だったんですね。
いつの時代においても、自分の愛が社会や相手に受け入れられない・認められないのは、見た目の美醜が原因ではないのではないかと思います。
愛とは双方の心の歩み寄り、すり合わせによって初めて成立するものなのかもしれません。
一方通行の独りよがりな愛は暴力的なもので、それは愛ではなく執着と言います。
そして独りよがりな感情は人を傷つけますし、自分も傷つけます。
私達もクリスティーヌとラウル子爵のように、健全に愛を伝え、育んでいきたいものです。
それではさようなら。
追記:劇団四季のオペラ座の怪人、youtubeでも予告編やクリップは見れるので、見てください!!! すごいですよ!!!!