合川小春

夏生まれです! うさぎと豆腐と本が好きです!

見せてやるよ、俺の全力命乞いーー【人間腸詰/夢野久作】

こんちは! 疲れているときにお昼寝をすると高確率で悪夢を見る合川です。

 

 

突然ですが皆さんはを見ますか?

私はよく見ます。しかもかなり変な夢*

*ホールケーキ柄のルービックキューブに四方八方から襲われる夢、蚊取り線香でフラフープを作る夢、目の前で人が爆発四散する夢など

 

夜眠るときだけではなく、電車での居眠りやお昼寝などの短い間でもかなり濃ゆ~い夢を見るので、全く休んだ気がしません。

夢魔とか憑いてるんでしょうか。

もし私に夢魔がついているのなら、悪夢ではなく綺麗なお姉さんが出てくる楽しい夢を見せてほしいものです。そのほうが嬉しいので。

お願いします(懇願)

 

それはさておき、夢を見るメカニズムというのはとても興味深いですね。

レム睡眠とかノンレム睡眠など、難しいことは分からないですけど。

私たちが日中に経験したことが、眠っている間の脳の処理や夢に影響を与えているそうです。

普段私は寝る前や通学中の電車の中で本を読むことが多いです。

しかし寝る直前に読んだ本によっては高確率で悪夢を見るので、夜の一冊はかなり厳選しています。

 

今回はあんまりにも悪夢を見るので寝る前に読むのを諦めた、夢野久作の短編集を紹介したいと思います!

 

『人間腸詰』/夢野久作

角川文庫

 

以下、あらすじです

*今回は以下、ショッキングな内容が含まれます!

(アレなところは薄い灰色で書きます)

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舞台は明治時代末期のアメリカ・セントルイス

日本人大工の治吉は、異国で開かれる大博覧会で烏龍茶の売り子として働くため、はるばる海を越えアメリカへやってきたのであった。

 

じゃぱん、がばめん、ふおるもさ、ううろんち、わんかぷ、てんせんす。かみんかみん

ーー日本専売局台湾烏龍茶一杯十銭、イラハイイラハイーー

 

こんな一つ覚えの売り文句を唱えながら、仲間とともに売り子の仕事をこなしていく。

 

治吉が勤める台湾館では、綺麗な台湾人の女性たちが給仕として働いていた。

しかし彼女たちはアメリカの怖い人たちの愛人との噂があり、指一本触れてはいけないと釘を刺されていたため、治吉たちはチラチラと彼女たちを眺めることしかできないのであった。

 

そんなある日のこと、治吉はチイ嬢という一人の給仕により異国・アメリカの街へと連れ出される。

治吉はカント・デックというアメリカ人の地下室に連れていかれ、彼のもとに軟禁される。

どうやらデック氏は、自身の地下室の隠し棚にからくり仕掛けを施させるまで、治吉を職場に返すつもりはないという。

 

治吉がこれを拒むと、デック氏は「そんなら今一つ面白いものを見せましょう」と彼を小部屋へと引きずって連れていく。

ジメジメと濡れたコンクリートの小部屋の中心には、大きな肉挽機械が耳障りな音を立てながら廻転していて……

 

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シンプルに怖すぎる。

この肉挽機械が何に使われているのかは、もうお察しですよね……。

私ならこれを見せられた時点で持ちうる限りの力を振り絞り全力で命乞いをします。

デック氏「からくり細工、作ってくれるよね?」

わたし「モチロンデス」「オシゴト、タノシイデス」

絶対服従

 

治吉は謎の肉挽機械を見せられただけでなく、さらに恐ろしい光景を目の当たりにします。

直接的な描写はないものの(やさしい)、それだけに行間から滲み出てくる質感がより一層リアルに感じられ、辛くなります(やさしくない)。

冷たく湿った部屋、天井の低い部屋に立ち上る臭い、機械的に繰り返される回転……

書いてて具合悪くなってきた……。

 

ギャング怖すぎる。人間怖すぎる。業が深い。

こんな気持ちになったのは馳星周の『漂流街』を読んだ時以来です。

それだけではなく、裏社会の怖い人たちの恐ろしさとはまたベクトルの違う、女の情念・執念深さ・恐ろしさも感じることができます。

いつの時代も危ないところには近づかない・美人局にはついていかないのが一番です……。

 

結局、治吉は例の売り文句のおかげで一命をとりとめます。

人間何が役に立つかは分かりませんね。いろいろなことを覚えておいて損はないでしょう。

命からがら、一命をとりとめたとはいえ、それでもかなり後味の悪い、ゾッとする結末が待ち構えています。

 

 

恐ろしい内容で気が滅入ってしまいますが、夢野久作が仕掛けた言葉遊びで癒されましょう……。

まだまだ英語には馴染みのない、明治末期の日本人には英語はどんな風に聞こえていたんでしょうね。

ヘンテコな空耳に聞こえて居てもおかしくありません。

たとえば。

ホームシック →オウム・シッコ

ノスタルジー →ノスタレ爺/野垂れ死に

 

みたいな感じ。

本文もしゃべり口調で書かれているので、声に出して読むと面白いかもしれません。

他にもシモい感じの小ネタもあるので、それらを見て暗いところから目をそらしましょう。

 

 

伏線回収が気持ちよく、最後まで読むと頭の中がぐるぐる回転する浮遊感が面白く、吐き気がするくらい強烈でクラクラする小説です。

頭の中がスペースマウンテン。

悪夢を見る可能性が高いので寝る前に読むのはよしたほうがいいですよ。

夢の中に綺麗なお姉さんが出てきても、美人局の可能性もあるので安心できませんね。

私はこの記事を書くのに読み返したので(現在の時刻23:32)、今夜は震えて眠ることになりそうです。

とりあえず命乞いの準備をしておこうと思います。

 

おやすみなさい!